【ハウスメーカー比較】各社の耐震実験とその違いや結果について
地震大国の日本では、住宅の耐震性能は切っても切れない問題のひとつですよね。
大きな地震が襲ってきたとしても、家を建てる方が出来るだけ安心できるよう、各ハウスメーカーは耐震性能の向上のため日々研究を続けています。
各ハウスメーカーでは、耐震性能の高さを証明するすべとして、『実大住宅振動実験』を行っています。
この実験は実物大の建物を振動台に設置し、様々な地震波で建物を揺らすことで建物の安全性を確かめるものですが、各社『実験のスタンス』や『建物の損傷度合い』、『建物の揺れ方』などが全然違います。
今回の記事では、各社の実験映像をご紹介すると共に、違いや注意点など現役住宅営業マンのわたくしが解説させていただきます。
各社の実大振動実験
各メーカーで実験に対する公表範囲は様々です。
実験施設、実験内容、結果、動画公開の有無など細かな違いを見ていきましょう。
積水ハウス
大手ゼネコン『大林組』の実験施設にて実施。
最大加振は阪神淡路大震災の2倍に相当する揺れを加えています。
映像では建物自体はグラグラとかなり揺れている感じがします。
内部の映像でも家具が大きく移動していますが、目立ったダメージはなさそうです。
耐力壁である『鉄骨ブレース』と、制振システムの『シーカス』が横並びになっていて、地震エネルギーをしっかりと熱に変換して逃していることがサーモグラフィーの映像で見てとれます。
また鉄骨ブレースは地震の揺れをメインで吸収する構造体になりますが、引っ張られて伸びてしまっていることも確認できます。
この実験では大地震75回、中地震170回を含む、合計245回もの繰り返し地震に対して、大きな損傷がなかったと発表しています。
ダイワハウス
国の防災実験施設『E-ディフェンス』にて6日間に渡る大規模実験を実施。
震度7相当のエネルギーである175カインを4回連続で加振。
(阪神淡路大震災、鷹取波は169カイン)
結果としては柱や梁への損傷はなく、新築時の耐震性能を維持していると公表しています。
大地震4回を行ったことは公開されていますが、他にはどのような地震波を何回加えたかということは非公開となっています。
へーベルハウス
へーベルハウスは、2002年に大林組の実験施設にて2階建て住宅の実大振動実験を行っています。
阪神大震災の震度7クラスの地震波で加振していることは公開されていますが、加振回数や建物の変形量、実験の結果及び詳細は全て非公開です。
(引用:へーベルハウスHP)
2015年に『E-ディフェンス』で行われた、重量鉄骨造3階建てが最新の実験になります。
震度7相当の揺れを23回加えたことが公表されており、内外部ともに大きな損傷がなかったと発表しています。
実験映像の動画が一般公開されていないため、実際にはどのような揺れ方だったかなどの詳細情報は全て非公開。
建物に大きな影響が生じたのか、何か特別な理由があるのでしょうか?
(引用:へーベルハウスHP)
住友林業
住友林業のビッグフレーム構法では、3階建ての建物で実大実験を行っています。
↓↓実験映像は住友林業HPで公開されています
https://sfc.jp/ie/tech/bf/taishin.html
東日本大震災の震度7を2回、阪神大震災の震度7を20回の計22回の大地震と、震度4〜6弱を含む246回もの加振に対しても、構造躯体の耐震性を維持し続けているという結果が公表されています。
(引用:住友林業HP)
主力商品のマルチバランス構法では、阪神大震災1.2倍、1.5倍を2回、2倍を7回の計10回を加振。
一部内装と外装のサイディングに軽微な損傷があったと公表。
揺れ方や詳細は非公開なので、修理が必要な損傷が出てしまったのでしょうか。
(引用:住友林業HP)
セキスイハイム
セキスイハイムは、2003年に大林組の実験施設で行われた2階建ての実大実験動画が公開されています。
阪神淡路大震災の2倍、その後2.2倍などの大地震を含む総加振回数49回揺らしていますが、びくともしない強さを実証したと公表されています。
ボックスラーメン構造のようなユニット構造は、耐力壁が存在しないため比較的揺れが大きいため、室内にいると家具が激しく動いてひとたまりもないように思えます。
阪神淡路大震災の2.2倍実験では、外壁が外れたり窓サッシが脱落して割れてしまっていますが、そもそもセキスイハイムの構造は、まず外壁で地震力を吸収しその耐えうる領域を超えると外壁が外れ、次に構造体の鉄骨ラーメンで耐えるという考え方になっているため、これは計算通りの結果になります。
ミサワホーム
ミサワホームは、1997年に東京大学と共同で業界初となる3階建て実大振動実験を行っています。
今から20年以上も前になりますが、未だに公式ホームページに実験について掲載されています。
阪神淡路大震災相当の揺れでは内装、構造ともほとんど損傷がなかったといいます。
(引用:ミサワホームHP)
2004年には明治大学と共同で大林組施設で2階建て実大振動実験を実施。
阪神淡路大震災の2倍相当の地震波を含む13回連続の大地震、のべ39回の加振にも内装・構造ともに目立った損傷はなかったといいます。
↓↓ホームページ上では実験動画が一部見ることができます。
https://www.misawa.co.jp/kodate/kodawari/mgeo/
この実験で制振装置「MGEO(エムジオ)」を採用した建物の変形量はわずか8.2mmと一般的な鉄骨ブレース構造の約1/8になるとのこと。
ただし、一般公開されている実験レポートからは、実験用に制振装置が必要枚数以上に装備されているのではないか、という見解もあるようです。
(引用:ミサワホームHP)
パナソニックホームズ
大林組の実験施設にて2階建て住宅の実大振動実験を実施。
パナソニックホームズは住宅メーカーで唯一、振動台の限界加振である阪神淡路大震災の4.3倍という想像を絶するような揺れにも挑戦しています。
大地震57回、中地震83回の計140回の加振にも構造体には損傷がなかったと公表されています。
三井ホーム
『震度7に60回耐えた家 』というキャッチコピーがインパクトのある三井ホームの実大振動実験。
テレビCMでも耐震実験の様子が流れていたのが印象的です。
ツーバイフォーの三井ホームは、外壁全体で地震エネルギーを分散して揺れを抑えています。
トヨタホーム
2008年に大林組施設で実大実験を実施しています。
震度6以上の大地震を17回、トータル90回の加振にも「構造体には損傷なし」。
一条工務店
「夢の家 I-HEAD構法」では2002年に実大実験が行われています。
阪神淡路大震災の1.5倍、阪神大震災クラスを10回以上加えるも建物の被害はほとんどなかったと公表しています。
(変形量、詳細結果等は不明)
(引用:一条工務店HP)
2015年には、「E-ディフェンス」にて『2階建て2×6』、『3階建て2×6』、『木造軸組』など7種類の建物で大規模な実験を実施。
阪神淡路大震災、東日本大震災、新潟中越沖地震、南海トラフ想定地震波など、さまざまな種類の地震の揺れを再現して加振。
全ての建物が想定外の地震にも耐えることができたと公表していますが、内装・外装・構造の破損状況に関しては、公開されていないので不明です。
ただし建物の気密性に関しては、実験後も高い状態を維持していたということから、大きな損傷はなかったということも考えられます。
(引用:一条工務店HP)
まとめ
実大振動実験には、実験する建物の仕様には決まりがなく各社それぞれのため、横並びで比較検討するのは困難です。
しかし実験映像や公表結果を見比べてみると、揺れの大きさや損傷具合など、各社で違いは感じ取れる部分はあります。
本記事で紹介しているような大手メーカーでは、大地震にも簡単に倒壊するような家はないと思いますが、繰り返す余震にも限りなく損傷が少ないメーカーを選ぶことができたら、より一層安心できるお住まいになることでしょう。