積水ハウスの制振構造システム「シーカス」は有効なの?
積水ハウスのオリジナル制振構造システムである『シーカス(SHEQAS)』
地震の振動を熱エネルギーに変えて吸収する役割を果たしており、建物の揺れを最小限に抑えダメージを軽減、地震後も安心して住むことができるといいます。
この「シーカス」は数年前まではオプション仕様でしたが、現在はほとんどの商品で標準採用されています。
シーカスを採用している積水ハウスの構造は、本当に安心で安全な構造なのでしょうか?
鉄骨ブレース構造
(出典:積水ハウスHP)
積水ハウスの主要商品は鉄骨造で、鉄骨軸組工法になります。
軸組工法とは、構造体が柱と梁で構成されていて、必要な箇所には耐力壁と呼ばれる、地震の力を受け止めるための構造体が組み込まれています。
木造在来工法では筋交いという「X型」の耐力壁がメインになっていますが、積水ハウスは「ブレース」と呼ばれる鉄の斜め部材で、地震力をブレースが引っ張られることで吸収し、柱や梁などの主要構造体の損傷を防ぎます。
シーカスが開発された経緯
震度5程度までの中地震には、ブレースが引っ張られることで部材の損傷を防ぎますが、震度6〜7の大地震となるとブレースが伸びきってしまう「スリップ現象」が起きてしまいます。
伸びきってしまったブレースは、ターンバックルで締め直すことで元の状態に戻りますが、家の壁を外すか内壁を壊さなければなりません。
阪神淡路大震災で被災した積水ハウスの家は、未だブレースが伸びきったままになっているところもあるようです。
震災を機に大地震にはブレースだけでは不十分であると、積水ハウスは制振構造の開発を始めたというわけです。
シーカスは有効なのか
積水ハウスが公開している実大住宅の振動実験を見てみましょう。
【SEKISUI HOUSE GLOBAL】Technology2
動画のサーモグラフィーを見てみると、シーカスフレームがしっかりと地震による揺れを熱エネルギーに変換して吸収しているのがよく分かりますね。
シーカスの導入によって地震による変形量は、ブレースのみの状態に比べて1/2に軽減されます。
隣接しているブレースにも着目してみると、地震エネルギーを引っ張り変形することで吸収しています。
積水ハウスのユニバーサルフレームシステムは、あくまでブレースがメインで地震の揺れを受け止め、シーカスは補助的に揺れをさらに軽減するという考え方です。
大きな地震を受けた建物は、ターンバックルでブレースを締め直すという『補修を前提とした構造』であるといえます。
建物の規模にはよりますが、ブレースは1棟当たり数十箇所設けられているので、震災後に1棟1棟修復するというのは現実的にかなり厳しいでしょう。
また高評価の外装材『ダインコンクリート』を採用すると、ブレースの点検及び補修をするには、外壁は外せないため内壁を剥がす必要があります。
そうなるとクロスや壁の補修を要し、修理・点検費用は施主にとってかなりの負担になってしまうことが予想されます。
まとめ
シーカスの採用により大きな地震にも、簡単には倒壊するような恐れはないように思えます。
ただしブレースが機能しなくなるような自体になれば、建物大きな損傷を受けるリスクは残ってしまう構造です。
地震はいつどこでどんな規模が発生するか分かりません。
ハウスメーカーによって考え方がそれぞれ違うため、よく比較検討して選んでください。